むかしばなし
むかーし(5〜6年前?)どこぞに書きなぐった話。
消すのもなんだな、と思って取っといたのを見つけた。
自分の中ではよく書けた方だと思ってるので転載。
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それは昭和63年10月に開局したJ-WAVEが本放送前の試験放送期間中のことでした。試験放送といっても、CMなしでJazzっぽい曲とかをブッ通しでかけてたりして、「オシャレっぽいよね」と、当時の仲間内で話題になっていました。
そんな頃のある夜のお話です。文字どおり「むかしばなし」ですね。
もう夜11時近くなった頃、近くを通るついでだからとクルマに乗せてくれたひと(女性)がいました。なんかゴチャゴチャと堆積してた荷物を押しのけて、中に埋もれていた助手席を発掘してくれたのでありがたく乗せてもらいました。
「・・・・・・」(無言)
しばらくして、思い出したようにラジオのスイッチが入り、J-WAVEがかかりました。でも、なんか変なんです。やたら雑音が多くて聴きづらいんですよ。
「これ、新しいとこ、気にいってんだ〜♪」と彼女。
「そうそう、J-WAVEつったっけ? オシャレだよね〜」と僕。
「気に入ってんだけど、2〜3日前から音が悪いんだよね〜。なんでだろ? 電波悪いのかな〜?」と彼女。
「え〜? ここ東京だぜ。地下トンネルでもないのにそんなワケないだろ。前橋や宇都宮じゃあるまいし……。チューニングずれてんじゃねぇの?」と僕。
「そんなことないよ!ちゃんと合わせて、そのまま何もさわってないもん!絶対電波悪いんだよ!」
僕はラジオの周波数表示を見ました。そこには「81.2」と表示されていました。
タイミングよく「エイティワン・ポイント・スリー・ジェ〜イウェ〜ブ♪」と、ジングルかかったと思ったら、彼女もそのジングルを口ずさんでいるではありませんか!
「Jウェイブって、周波数いくつだっけ?」と白々しく聞いてみました。
「知らない!(キッパリ)」
「今、エイティワン・ポイント・スリー♪ って歌ってたよな?」
「うん」
「それって、81.3ってことだよな?」
「うん(バカにしないでよ!)」
僕はラジオの周波数表示を指差して彼女に聞きました。
「これいくつ?」
「81.2」←まだ気付いてない
「・・・・・・」
「・・・・・・」←まだ気付いてない
「ピッ!」
僕は無言でラジオのチューニングボタンを押して周波数を「81.3」に合わせました。スピーカーからはクリアな音が聞こえてきました。
「あ、直った……。なんで?」
「チューニングずれてたから合わせ直した」
そんなことをしてるうちに時刻は11時を過ぎていて、車内のデジタル時計が「11:11」を表示していました。
「11月11日、あたしの誕生日」
「え?」
「いちいちいちいちうるさい子って覚えるのよ」
「あ、そう……。もうすぐだね……」
僕に誕生日を覚えろと?……。もうすぐ誕生日だと?……。
「それってプレゼントよこせ、っていうこと?」
「げええーっ!気持ち悪いこと言うなーっ!」
そう来るか!!!!!
それ以来、デジタル時計の「11:11」の表示を見るたびに、彼女の誕生日を思い出します。たぶん、一生忘れる事はないと思います……。
まるで、僕の脳ミソの奥深くに刺さったまま抜けなくなってしまったトゲみたいな。
「いちいちいちいち…」は、デジタル時計の「11:11」表示を見たとき限定で、11月のカレンダー見ても思い出したりしないから不思議。
まぁ、へたに思い出して「誕生日おめでとう」なんて言ったりしたら、きっと、こんな返事が返ってくるはず。
「げええーっ! なんでアンタがアタシの誕生日知ってるの?」
※これは「事実の一部をもとにしたフィクション」です。実在の人物のイメージを最大限に膨らませてはいますが、ご本人とは関係ありません、ということにしておく。
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