スーパークールビズって、ようするに「見せ球」だろ?

 
 今年の夏は電気が足りない。少ない電気をみんなで分け合って大切に使わなくてはならない。
 
 夏の電気使用の多くを占めるのが冷房だ。みんなが冷房を控えめにすれば全体での電気の使用量が減る。電気の使用量を減らせば「足りない」部分を少なくできる。
 
 とくに、オフィスの冷房。これを弱くして電気の使用量を抑えよう。
 
 冷房を弱くするということは、室内の気温が上がるということ。室内の気温が上がると、それだけ暑く感じるということ。
 
 暑く感じたらどうする? ねえ、キミ、どうする?
 
 そう、薄着になればいい。キミ、アタマいいね。
 
 てなワケで、みんなで薄着になろうぜ!っていうのが「クールビズ」。スーツの上着を脱いで、ネクタイを外して、長袖ワイシャツやめて半袖ワイシャツに着替えてっていうアレ。
 
 じつはもう数年前からやってたんだけど知ってた? 見たことあるよね? でもね、残念なことに今までのようすをみると、クールビズが社会に完全に受け入れられていたとはちょっと言いがたい。なぜなら、
 
「ビジネスマンたるもの、カチッとしたスーツを着こんでビシッとネクタイを締めているなくてはならない」という既成概念を座右の銘にしている保守的な爺様たちがいるから。
 
 こういうひとたちは、スーツの上着を脱いだりネクタイを緩めたりすること=リラックスしていると考えている。ビジネス戦士が緊張感を緩めた姿勢を他人に見せてはならないと信じているひとにしてみれば、それは許しがたいことなのだ。
 
 ことに、エライひとにしてみれば、自分がリラックスするのはまあ許せることだとしても、自分の周囲の人間が、少しでも緊張を解いた姿を自分に見せるなんてことは、とんでもなく失礼なことだと思っているにちがいない。
 
 
 
「ワシに対する敬意が欠けとる!」
 
 
 
 そうは言ってもアンタ、カチッとスーツ着こんでネクタイ締めていても快適な室内温度を保とうと思ったら、冷房の設定温度は22〜23℃くらいまでに下げてなきゃならないんじゃないのかい?
 
 それを節電モードが推奨する28℃くらいに設定し直しちゃったら、とてもじゃないけど暑くってやってらんないよ。たぶん。
 
 28℃くらいの室内温度でも一応快適に過ごせるためには、上着を脱いで、ネクタイを外して、ワイシャツの袖をまくるか半袖ワイシャツになって……と、クールビズになるしかないでしょう?
 
 
 
 それでもやっぱり由緒正しき保守的な爺様たちには相当な抵抗があるんだろうね。「上着を脱いだりネクタイを外すなんていう破廉恥な真似などできるか!」って。
 
 
 
 そこで考え出されたのが例の「スーパークールビズ」。これはブレークスルーだよ。
 
 オフィス内でアロハ着て半パン穿いてる姿を見たら、だれだって「なんじゃあこりゃあ!!!」ってのけぞっちゃう。
 
 で、ビックリしたまま視線をもどしてノーマルなクールビズを見てみよう。すると、あ〜ら不思議、「クールビズって、あんがいマトモじゃん?」って思うでしょ?
 
 
 
「これならワシにも手を出せる」
 
 
 
 じつは、それこそが真の狙いだったのだ。
 
 アロハに半パンのスーパークールビズってのは、言ってみりゃ打者のインハイ胸元を突くビーンボールまがいの見せ球だ。打者をのけ反らせてビビらせるのが目的。そうして腰が引けてるところへ次の勝負球。外角低めに外へと切れてボールになるスライダーだ。思わず手を出したバットが空を切る。
 
 そう、今まで手を出してこなかったノーマルなクールビズ、ノー上着・ノーネクタイ・半袖ワイシャツに手を出させるための見せ球だったんだね、スーパークールビズは。さすがの戦略。
 
 というわけで、今年は去年に比べても、もう少しユルめの服装で出勤しちゃっても許されそうなので、これまで着ていた夏物スーツがだいぶくたびれてきたからそろそろ買い換えどきではあるのだけれど、今年は買い替えせずに済ませちゃおうなどと考えていて、もっとラフなチノパン(←こないだ近所のオズで800円くらいで買った)なんかで出勤しちゃおうかなって思ってる。
 
 どうせ内勤だし。←私は経理マネージャー
 
 お客さまに対面することなんかまずないし、――「お客様に失礼のないように」と書かれているわが社の「クールビズ通達」を見ると、当社にとっての「お客さま」ってのはどうやらカスタマーではなくてビジターのことを指しているようだから、その場合の私が会う「お客さま」というのは会計士とか税理士ってことになる――会ってもこっちがクライアントの立場で会うことになるわけだ。
 
「先生、ネクタイなんかしてちゃダメじゃないですか。節電に協力する気はないって言ってるみたいですよ」って、説教のひとつもカマしてあげられそうだよね。
 
 
 
 てなわけで「節電」という大義名分の前には、チノパン穿いて出勤するくらいのことはイチイチ目くじら立てられるようなコトではないから容易に受け入れられるだろうと予測する。
 
 靴だって、黒い革のスニーカーだったらお咎めはあるまい。履物についていえば、私より年長の、オフィス内をサンダル履きでペッタンペッタン歩いているオッサンたちはクールビズ導入以前の昔からとっくに存在していたはずでもあるし。
 
 もし、モンダイとして指摘されるようなことがあるとすれば、「シャツ出し」を試みたときにそれが許されるかどうかだな。面白そうだからそのうち試してみるとしよう。
 
 あとほかにモンダイとされそうなことといえばどんなことがあるだろうか? 梅雨が明けたころからがいよいよ本格的な「お楽しみ」の始まりだよね。
 
 どうせやるなら楽しまなくちゃ♪