6/24(金)朝8:30の三菱東京UFJ銀行青山通支店ATMコーナーにて

 
 今朝は出勤途中の朝の一番から慌ててしまった。現金を引き出そうと立ち寄った銀行ATMにキャッシュカードを食われたのだ。
 
 青山一丁目駅都営大江戸線を降りたのは8時17〜18分ごろだった。今日は途中で時間調整などせずスムーズにここまで来れたと思って電車を降りたところで「時間調整をいたします」のアナウンス。今日はなんかツイてるかも、なんてことを考えながら青山ツインタワービル東館1Fにある、銀行名にローマ字を3つ含むCMキャラクターが三浦春馬くんな赤い看板の某銀行のATMコーナーへ。
 
 ATMコーナーに入ったときの時刻は8時25分ごろ。たしか5台あるATMの全部がすでに操作中のひとで埋まっていた。そうだ今日24日は(25日が土曜日なので1日繰り上がった)給料日ではないか。
 
 複数の振込操作があるためか、いったん操作が終わったと思ってもつづけて操作しているひとがいるので、なかなかATMが空かない。2〜3分待ってようやく自分の順番がきた。真ん中のATMの前に立ち、タッチパネルの「現金のお引き出し」を指で突っついたのが、だいたい8時28分ごろ。
 
「カードを挿入してください」という画面の指示に従ってカードを差し込むと、「ただ今の時間帯は時間外手数料がかかります」とかなんとかいうメッセージが出る(なんとかステージのランクによって手数料が免除になっている)ので「確認」ボタンを押して、そのつぎは暗証番号を入力して……と、頭の中でATM操作の手順をなぞっていたら、
 
「お取引できません」と画面に表示され、カードの挿入口が「カシャッ」と音を立てて閉まりやがった。そこには「操作停止」の4文字。
 
 
 
 え? なに? どした? 何が起きた?
 
 
 
 今までに1度か2度、キャッシュカードが更新されたのにうっかり古いカードを挿入して、「このカードではお取引できません」ってなったことはあった。でも、そのときは「んべっ」っと即座にカードが突っ返されてきたはずだ。なのに今回はATMがカードを食ったままロックがかかってしまっている。
 
 もういちど落ち着いて画面を見る。そこにはやはり「お取引できません」の文字。何だよこれは? 意味わかんねえ。
 
 画面の下の方に「インターホンでご連絡ください」って書いてあるのを見つけたので目の前に取り付けてある受話器を取って耳に当ててみた。電話の呼び出し音のあと、
 
「ただいま大変混みあっています。しばらくしてからもう一度おかけ直しください」だと。
 
 
 
 どーすりゃいいの?
 
 
 
 インターホンのすぐ下に、「非常防犯ベル」の赤い押しボタンがあるのが見えた。これを押しちゃおうかな。でも、これって「防犯」って書いてあるから、セコムとかに通じてたりするんじゃないのかな? そして、押したと同時にサイレンが鳴り出したりしてATMコーナーのドアにロックがかかってシャッターが閉まっちゃったりするかも。
 
 なんてことを考えた。そしたらここにいるひとたちぜんぶが巻き添えじゃん?
 
 その間ずっと耳に当てていたインターホンからは相変わらず「ただいま大変混みあっています。しばらくしてからもう一度おかけ直しください」のアナウンスが聞こえてくる。
 
 
 
 時刻は間もなく8時35分になろうとしていたころ、「ガチャ……」と音がして、ATMコーナーと銀行店舗とを隔てているドアが少し開いて中年の男性が顔をのぞかせてこっちを見たので声をかけてみた。
 
「すいません、カード食われちゃったんですけど」
 
 という私の言葉が終わらないうちにドアが「ガチャリ」と閉まって彼は向こうへ引っ込んでしまった。ロックチェーンを解除するためにいったんドアを閉めたものと思われた。が、ドアは閉まったきりだ。
 
 
 
 それからまたしばらく時間が経過し、8時40分になろうというころになって再び例のドアが開いた。今度は女性だった。女性はこちらへ歩み寄ってきてこう言った。
 
「どうされました?」
 
 どうされました?じゃねーよ。カード食われてそのままなんだよ。インターホンは「混みあっています」とか言うばかりでつながらねーし。なんだこりゃ?いったい何の罰ゲームだよ、いつまで放置する気だよ?
 
「インターホンで連絡はされましたか?」
 
 ええずっとかれこれ10分くらい、連絡しようにもつながりません。この「非常防犯ベル」ボタン押そうかと思ってましたよ。
 
「それはセコムにつながっちゃうんで押さないでください」
 
 はあ? あんたひとの話を聞いてますか? 私のキャッシュカードがこのATMに食われたまんまで停まっちゃってかれこれ10分以上経過してるんですけど放置ですか? で、出てきて「どーされました?」じゃねーだろ?
 
 って言ってたら、その女性はクルッと後ろを向いてドアの向こうへ去っていきやがった。
 
 
 
 おい、待てよ、なんだよ、どこへ行く気だよ?
 
 
 
 そのまま2分くらい待たされたろうか、その女性が私のキャッシュカードを手にもって再び現れてこう言った。
 
「ちょっとカードが反っているようなので磁気が読みとれなかったんだと思います」
 
 
 
 そうじゃねーよ。放置しないで、すぐに飛んできて、対応して欲しかったんだよ。無言で引っ込むんじゃなくて、今なにが起きているのか、これから何をするのか、その間どうしてりゃいいのか、このまま待ってていいのか、そういうことを適切に説明して欲しかったんだよ。放置されている間、どんだけこっちが不安な思いを抱えていたのか感じてくれよ。
 
 お客サイドに立つってことは、そんなにむずかしいことじゃ、ないと思うけどな。
 
 
 
※このお話はフィクションっぽいです。実在の人物および三菱東京UFJ銀行青山通支店などとはあんまり関係ないかもしれません。