きまずさ

 
 高校1年生の娘が家をあけている。
 
 学校行事の海外ホームステイ研修に出かけているのだ。
 期間はおよそ2週間。
 それまでの間、自宅にいるのは夫婦ふたりだけ。
 
 仕事を終えて帰宅した自宅には妻がひとり。
 
 夫婦ふたりで夕食をとり、それから寝るまでの時間を、それぞれがテキトーにTVを視たり本を読んだり風呂に入ったり晩酌したりしながら過ごす。
 
 
 
 これが気まずい。間が持たないのだ。
 
 
 
「…………」
「…………」
 
 
 
「…………」
「…………」
 
 
 
「…………」
「…………」
 
 
 
 沈黙をやぶって妻に声をかける。
 
 
 
「お茶淹れようか?」
 
 ここで、
 
「そうね」とか、「いただくわ」とか応えるような妻ではない。
 
「だれもダメだって言わないんだから、勝手に飲めば?」とくる。
 
 
 
 え?
 
 
 
 私にもその程度の学習能力はある。なので、次の機会には黙って勝手にお茶を淹れて飲むことにする。
 
 そうすると、今度は、
 
「なによ? 自分ひとりで飲むつもり?」
 
 
 
 え?
 
 
 
 ふむ……。
 
 
 
 ならば、その次の機会には、もうひと工夫してみよう。
 
「お茶、飲みたくない?」と、声をかけてみる。
 
 すると、
 
「なによ? わたしにお茶を淹れろって言うわけ?」
 
 
 
 いったい、私はどーすりゃいいの?
 
 
 
※このお話はフィクションです。実在の妻や私とは一切カンケーないような気がします。