オフィスに浮いてる風船みたいな?

 
 もうさ、私のことなんか放っといてくんないかな?
 別に、アンタに迷惑かけてるワケじゃないじゃん?
 私のしていることが何かアンタに関係ありまして?
 
 という感じの対人距離感って、こんな感じかもな。
 ふとそんな気がしてしまう、今日のこの1冊です。
 
 
『ぬるい男と浮いてる女』(著: 平 安寿子)
http://www.amazon.co.jp/dp/4163286500

 
 
 「長い目でみて」
 「ブルーブラックな彼女」
 「滅亡に向かって」
 「浮いてる女」
 「ぬるい男」
 「えれくとり子」
 
 収録されている作品の、それぞれのタイトルからして「どんなだろう?」って思うような、なんかちょっとヘンな人たちの、なんかちょっとヘンな行動を、自分には被害が及んでこない程度の射程外の距離に身をおきながら、醒めた目でしっかり観察している感じの短編集。
 
 ちょっとヘンな当人たちは、自分がちょっとヘンかもしれないかも?なんてことは少しも思わずに毎日マイペースで暮らしているのだが、その、ちょっとヘンなところに惹かれて執着してのめり込んでいく人に向ける著者の眼差しがイイんです。うふふ。
 
 
 
 今日のこの1冊です、なんてことを言っておきながら、すぐに2冊目を紹介してみたりする。だって好きなんだからしょうがないじゃん。
 
 なんか文句、ある?
 
 
 
『ワーカーズ・ダイジェスト』(著: 津村 記久子)
http://www.amazon.co.jp/dp/4087713954

 
 
 この表紙に、このお尻。
 ぶら下げられた洗濯物。
 出しっぱなしのカップ
 見事にすさんでますな。
 
 まあね、毎日働いていれば、そういう気分になることもあるさ。
 
 コピーを取ろうと思ったら「用紙切れ」だったとか。シュレッダーかけようと思ったら裁断くずが満杯になってたとか。コーヒーでも飲んで気分転換しようと給茶室に行ったらコーヒーサーバーが空だったとか。んじゃあ紅茶でいいや、ってんでポットをみたら湯沸かし中で湯温がたったの50℃だったとか。ちぇっと思いながら冷蔵庫の麦茶をコップに注いで口にしたら生ぬるかったとか。(これがコントだったら「めんつゆ」ってトコなんだよね)
 
 デスクに戻ってみれば、自分が席を外していた今のほんのちょっとの隙に、これまでなかなかタイミングよく連絡がとれずにいた××さんから珍しく電話が入っていたらしく、「折り返しTEL願います、至急!」ってメモに書かれた番号にさっそくかけてみたのに聞こえてきたのが「電源が入っていない場所に……」のメッセージだったとか。
 
 そういえば、あの人ったら、どーもさいきん、やたらとツンツンしてるってゆーか、何か言えば必ず否定的な反応ばっかりで、なんか疲れるんだよね。
 
 私、何か気に障るようなことしたっけか?
 
 てゆーか、前から私ずっとこんな感じで、接し方を変えたりはしていないはずなので対処のしかたがわからない。何なのいったい?
 
 
 
 という調子で、なんとなくお疲れモードかもしれないと感じているときに、ふだんの行きつけのあのお店に行ったりしたら、そこで今はあんまり会いたくないなあと思っているあの人にもしかしてバッタリ会っちゃうかもしれないからとそのお店を避け、どこかほかのお店を開拓してみたりするのもちょっと楽しそうでいいかもしんないなんて、たまたま漂ってきた美味しそうな匂いにつられて吸い寄せられるように、ちょっと古びた店構えの洋食屋に入ってみたりする。
 
 そしたらそのお店で、とびっきり美味しいドミグラスソースに出会っちゃったのに近いかもね、この感じ。
 
 そのお店がそこにあるってことは、もう何年も前からずっと知っていたはずなのに、どうして今まで試してみようとは思わなかったんだろう? なんか今まで損して生きてきたような気が少々しないわけでもないが、今ここでこの美味しさに出会えたよろこびは大きな幸せといってもいい。ごちそうさま。
 
 これからもひいきにするから、よろしくね。