終身婚姻制度の放棄と非正規婚姻と

 
 雇用という面から考えてみると、主たる稼ぎ手は男性で女性は専業主婦として家庭に入っていた時代から、夫婦共働きの時代へと移行してきているのはご存知のとおり。
 
 その流れと並行するように、雇用形態も多くの企業で採用されていた終身雇用制度から、転職の一般化による労働力の流動化が進んだり、正社員採用から派遣労働者の採用などを通して非正規労働者の比率が高まるなど、かつての常識が今では通用しなくなってきていることを実感しちゃうよね。
 
 世の中の流れが大きく変わろうとしているのだよ。
 
 それは雇用制度に限った話ではない。おそらく婚姻制度にも及ぶことになるかもしれない。
 
 
 
婚外子の相続差別は違憲 高裁
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111004k0000e040039000c.html
 
 
 
 画期的な判決だと思う。
 
 終生変わらぬ婚姻関係を何より重視し保護してきたはずが、婚姻関係にない男女のあいだに生まれた子の相続権を、婚姻関係にある夫婦間の子と区別せずに平等に扱うべきと言っている。
 
 親と子との関係を、両親が婚姻関係にあるか否かといった属性によってではなく、単に血縁関係によってのみ判断しようとしているのだ。
 
 そんなの実質的にはあんまり関係ないんだぞ、と。
 
 生まれた子と親との関係が、両親の婚姻関係の有無によって左右されるのは、男親と子の関係だけだよね? ウチの子とソトの子っていうように。
 
 女親と子との関係にはウチもソトもないもん。父親が誰であろうと、どの子も「私がお腹を痛めて産んだ子」という点ではみな同じ。平等ですよ。婚姻内の子であるか、婚姻外の子であるか、なんてことを区別することの意味はなくなってしまうはず。
 
 てことは、財産相続を分ける際に、「父親が誰であったか知らないが、とにかくこの母親から生まれた子であればどの子も同じ」という視点が生じているはずで、それが意味するところは即ちコレだ。
 ↓
「母親の遺産をどう分けるか?」
 
 今までは遺産を遺す親が男親だけとは限らなくなってきた→経済力を持つ女性も遺産を遺すようになってきたってことだ。共働きだもんね。
 
 これは、婚姻関係のあり方が、雇用形態の変化を反映しているというか、同調しているのだとは考えられないだろうか?
 
 ということはだよ。終身雇用制が崩れ、雇用の流動化や非正規雇用が進んでいるという変化にも同調してきても、それは決しておかしいことではない。
 
 雇用と婚姻と、このふたつはじつは同調しているのではないか?
 
 つまり、終身婚姻制度が崩れ、婚姻の流動化や非正規婚姻が深く静かに進行しているということだ。この判決は、そういう世の中の流れを示唆しているのだ。と、私にはどうもそんな気がしてならない。