買いに行ったのは、ちゃぶ台じゃなくてコタツだったんだよ
この冬、わが家では、結成以来初めてコタツを導入することになった。導入を決めたのは妻だ。
「ニトリまでクルマを出して欲しいんだけど」
妻の「鶴のひと言」発動により、日曜の夕方18時半をちょいとまわった頃に自宅を出たクルマは、19時ちょい前くらいに成増のニトリ(都心から見て、R254川越街道と笹目通りとが交差するちょい手前)に着いた。
妻が導入しようと思っているのは「脚をたためるコタツ」であった。
何も置かないままのフローリングの床お気に入っている妻は、コタツを冬のあいだ中ずっと出しっぱなしにしておくつもりはなく、そのときの気分で出したり片付けたりしたいのだそうだ。
私には、妻の希望に反対する積極的な理由がない。かわりに、積極的に推進する理由もない。妻が望むことならば、それがいい。というか、コタツなんか別にあってもなくてもどっちでもいいと思っているのだ。
コタツは今までずっと、わが家にはなかったモノである。これまでコタツがなくても全く困らずに暮らしてきたのだ。これからだってコタツがなくても生活に何の不自由があろうか?
しかし、妻の希望である。文句も言わずに黙ってそれを受け入れるのが夫の××というものだ。というよりも、
「今さらコタツなんかなくても全然困んなくね?」
などと不用意な発言をして妻の機嫌を損ねないようにすることが、何よりも大事で、まっさきに優先しなければならないことなのだ。そこをミスってはいけない。
さて、お目当ての品は、あんがいすぐに見つけることができた。正方形のコタツで脚が折りたたみ式(ニトリでの商品名は「折り脚リビングこたつ」というらしい)のものは1種類しかなかったのだから、迷う対象がない。
しかし、そこには思いもよらない落とし穴があった。
「あら、色が2色あるわ」
ダークブラウン(こげ茶色)と、ナチュラル(生成り)の2色が並んで陳列されていたのである。
「どっちがいいかしら?」
妻が問う。
「そんなことオレに聞くなよ」
と、言いたいところをグッとこらえた。
「布団かけちゃえば見えなくなっちゃうんだから、色なんかどっちでもよくない?」
「…………」
「あれ? どーかした?」
「…………」
どうやら私は「しくじった」らしい。
それはそうと、買って帰ったコタツの箱に書いてある文字が、どう見ても「ダークブラウソ」にしか見えないんだよね。
ダークでブラックな嘘?
※このお話はフィクションです。実在の人物・団体等には一切カンケーないはずです。