リコーダー天国。(後編)

 
 ソプラノリコーダーを買うつもりで楽器店を訪れ、そこで経験も知識も豊富な店員さんにいろいろと教えてもらい、一見どれも同じ造りに見えるリコーダーにも「バロック式」と「ジャーマン式」と指づかいの異なる2種類あることを知り、
 
しかも、「ジャーマン式」があるのはソプラノだけだということも知り、ってことは、リコーダー界における元祖で本家で正統なのは「バロック式」さんの一派であることを知ったうえで、
 
それでも、小学校の教材として教えやすく覚えやすいとされて広く普及した実績により全体としては主流派である(と思われる)、私がときどき吹いているサックスの指づかいとも極めて近い「ジャーマン式」を買うことに決めた――というところまでが前編のおさらいです。
 
 
 
 ガラス扉で施錠されている陳列棚に並んでいたソプラノリコーダーのうち、プラスチック製のものは16本。
 
 プラスチック製のソプラノリコーダーのうち、「ジャーマン式」のものは8本。候補は一気に半分に絞られた。
 
 残った8本をよく見ると、左半分が「ヤマハ」の製品で右半分が「アウロス」の製品であることに気づいた私は、8本あるように見えいて、じつは、事実上のライバル製品の1対1の組み合わせが4組あることにも気づいたのである。
 
 A: 1000円クラス
 B: 1400円クラス
 C: 1700円クラス
 D: 2000円クラス
 
 しかも、それぞれの対戦において、「ヤマハ」の方が「アウロス」よりも微妙にお値段がお高いのです。
 比べてみましょう。左が「ヤマハ」のお値段、右が「アウロス」のお値段です。
 
 A: 1080円 vs 1030円
 B: 1420円 vs 1350円
 C: 1760円 vs 1680円
 D: 2100円 vs 1980円
 
 いやね、もうね、これ見るとね、一方的に「アウロス」に肩入れしたくなっちゃうんだよね!
 
 
 
「アウロスの、その、いっちゃん安いのください」←安いのかよ!
 
「もうひとつ、お選びになる際のポイントがありまして」
 
「選ぶポイント、っていうと?」
 
「吹き口の孔の形です」
 
「吹き口の孔?」
 
「横真一文字型と、アーチ型の2タイプあります」
 
「私は横真一文字のタイプしか見たことないよ」
 
「横真一文字タイプは息の入りがスムーズで、お子様でも吹きやすくできています。いっぽう、アーチ型は吹き込みにやや抵抗感があり、息をコントロールすることで音色の変化をつけやすくなっています」
 
「吹いてて遊べるというか、面白いのはアーチ型なんですね」
 
「そうなんです」
 
「じゃあ、アウロスのアーチ型ので、いっちゃん安いのください」←やっぱり安いのかよ!
 
 
 
 というような店員さんとのやりとりを経て、アウロス製の吹き口がアーチ型の、いちばん安い1350円のソプラノリコーダーを買いました。
 
 
 
 さっそく吹いてみた。
 
 ちゃんと鳴るかどうか、ちょっと心配。
 
 そ〜っと「ソ」の音を吹いてみる。鳴った。
 
 息をコントロールしながら、ソラシドレ〜♪
 
 調子いいじゃん、ドシラソファミレ〜♪
 
 もっともっと、ドレミファソラシドレミファ〜♪
 
 あれ? 上のソとかラとかシとかが鳴りにくいな……。
 
 息の吹き込み方がよくないのかな?
 
 高温鳴らすときは息を細く速く……なんだけど、息が入り過ぎる。
 
 思い切って上に逃がして息を割ってみよう……って、イイ感じのカスレ感じゃね?
 
 うん、いい音だ。
 
 よーし、メロディ吹いてみよう。
 
 
 
 ドファ〜ファファファソ〜ラドラ〜♪
 ラドレ〜ミ〜レ〜ドラ〜♪
 
 
 
 なんか、「もうひとつ……」だな。